早朝の裏磐梯は、深い霧に包まれていた。
湖沼から立ち上った水蒸気が霧となり、山裾に静かに沈殿している。
朝霧をかき分けるようにして走る3台のTRX。
霧の中、有効視界は100m程しかないが、正確に国道459号の剣が峰交差点を左折して、磐梯吾妻レークラインへと向かう。
レークライン行きの目的は、朝練だ。
昨晩のtatuyaさんのアドバイスを試したくて、kuroki達4名は早朝5時に起き出したってワケ。
- tatuyaさん(講師)
- ゆういちさん
- Iidaさん
- kuroki
レークラインを駆け上がって高度を稼ぐと、徐々に霧が薄れ、視界が開けていく。
やがて霧の層を抜けきると、眼前に美しい青空が広がった。
昨日ミーティングを行った、中津川レストハウスに到着した。
誰もいない、だだっぴろい駐車場。
kurokiはココで、tatuya講師に見てもらいながら、練習することにした。
ゆういちさんは、レークラインを往復することにした。
そしてIidaさんは‥‥霧の中で迷子になっていた。
中津川レストハウスでトライカーナ
駐車場の中をくるくる走り回るkuroki。
トライカーナという、インストラクター達が良くやる練習方法で走り込んでみる。
- バイクと共に倒れ込む感覚を掴むこと。
- 両足のくるぶしでステッププレートを挟み込むこと。
- イン側のステップには荷重しないこと。
- イン側のヒザを曲げたい方向にセンサーのように開くこと。
- 尻半分をシートの上に残すこと。
数周走ってはtatuya講師のアドバイスを受け、また数周走って‥‥を繰り返す。
走り込むうちに、次第に身体がほぐれていき、スムーズに曲がれるようになってくる。
自分でもわかるぐらいに、バンク中の安定感が増してくる。
ゆういちさんも、レークラインを走り込んでいた。
実際の走りを観察した上でのアドバイスを受けていたので、無駄に試行錯誤する必要はもうない。
その頃Iidaさんは
その頃Iidaさんは、霧の中、国道459号を走っていた。
左折すべき剣が峰交差点を見落として、そのまま直進してしまったらしい。
出発前の準備に手間取らなければ、kuroki達に置いていかれずに済んだのだが、今更後悔しても遅い。
程なくして、kurokiから連絡が入る。
「昨日ミーティングを行った中津川の駐車場にいますので、早く来てください。」
何を勘違いしたか、昨日試乗会を行った道の駅裏磐梯の駐車場に行ってしまう。
当然、誰もいるワケがない。
再度kurokiからの連絡が入る。
道の駅に来てしまったことを伝えると、レークラインで待つ3人の間に、どっと笑いが沸き起こった。
時間もおしてきたので、宿で合流することになった。
結局、一緒に走ることがないまま、Iidaさんの朝練は幕を閉じた。
朝風呂
レークライン組の3名は、連続する下りコーナーを駆け下り、宿へと戻る。
kurokiは、走りにくいと思っていた下りが、笑っちゃうぐらい安定してバンクできるようになった。
朝練がバッチリ効いたことを実感する。
後ろを走るゆういちさんも、同じ思いだったようだ。
走るのが楽しくて仕方ないと、後の反省会で熱く語っていた。
宿に戻ると、Iidaさんは既に到着していた。
ちゃっちゃと片づけて、朝風呂に入って汗を流しながら、朝練の反省会を行う。
Iidaさんには、迷子の反省をして頂いたのは言うまでもない。
雨男ならぬ「迷子男」の笑号を付与することが、過半数の同意の下、可決された(笑)。
ペンションラフィア
ペンションラフィアは良い宿だった。
昨晩の夕食も旨かったが、今朝の朝飯も旨い。
飢えたTRX乗りどもにはふさわしくないという声が聞こえるような気もするが、キニシナイキニシナイ。
貸し切りの露天風呂もあるので、他の人に気兼ねすることなく、温泉を楽しめる。
今度は嫁と2人で来たい、と思ったりして(でも、バイクじゃ来られないなぁ)。
精算を済ませ、宿の前でお約束の記念撮影をする。
これから檜枝岐温泉に向かって出発するワケなのだが、いやー、それにしても今日も暑い!
既にこの時点で、汗だらだらのkuroki。
2日目のルート
ここで、2日目のルートを紹介しよう。
一般道を200km以上走る、結構ハードなルートになる予定だ。
ルート | デキゴト |
---|---|
ペンションラフィア | |
↓県道2号 | |
↓国道459号 | |
↓磐梯山ゴールドライン | kuroki号の電装系トラブル。 |
↓県道7号 | |
磐梯河東IC | |
↓磐越自動車道 | |
会津坂下IC | Iida号のサイレンサートラブル。 |
↓国道252号 | |
↓県道32号 | |
↓国道401号 | 峠道が非常に狭いのにビックリ。 |
檜枝岐温泉 | |
↓(名も無き舗装林道) | 最高に楽しい峠道。 |
木賊温泉 | |
↓国道352号 | ariさんとお別れ。 |
↓国道121号 | |
↓国道400号 | |
矢板IC | tatuyaさんとお別れ。 |
↓東北自動車道 | |
浦和料金所 | 解散。 |
磐梯山ゴールドライン
磐梯山ゴールドラインに入り、料金所でkurokiが6台分の料金を支払う。
支払いが終わり、TRXのスターターをON。
‥‥あれ?
気を取り直して、メインキーを入れ直すが、電源が入らない。
ウンともスンとも言わない。
kurokiの背中を、一筋の冷や汗が流れる。
とりあえず、料金所にいるのは邪魔なので、TRXを押して皆の待つ道路脇へ移動した。
シートを外してヒューズボックスをチェックするが、異常なし。
ふと気になって、バッテリー端子を触ってみると、
‥‥ゆるゆるじゃん。
単なるバッテリー端子の接触不良が原因だった。
締め込み直して、再度メインキーをONにしてみると、何事もなく復活した。
ツーリング前に電装系をいじくったことがアダとなってしまった。
キチンと締めたつもりだったが、走行中の振動で緩んでしまったらしい。
ったく、素人整備はコレだから(以下略)。
まぁ、大した問題じゃなかったのは、何よりだ。
本人は、かな~りビビッたけどさ(苦笑)。
kurokiがトラブルと格闘していたご近所に、今朝方大破したと見られるDUCATI 916を発見。
うわー、もったいねー(汗)。
磐梯山ゴールドラインは、料金所までフリー走行とした。
若干ゆっくり目のペースで、朝練で教わったことを反芻(はんすう)しながら走ってみる。
バンク中の姿勢が安定するようになると、いろんなコトを観察できるようになる。
バイクと共に倒れ込む感覚ってのが、少しずつ見えてきたような気がする。
磐梯山ゴールドラインは、とっても楽しいワインディングだった。
tatuya講師からレクチャーを受けるIidaさん。
しかし、東北の峠道は、交通量が少なくて楽しい。
磐梯山ゴールドラインと言えば、磐梯エリア屈指のワインディングロード。
伊豆や箱根だったら激混みだろうが、東北ならすいすいだ。
ツーリングに行くなら東北へ!という気持ちが強まるkurokiなのだった。
Iida号にトラブル発覚
磐梯河東ICから磐越道に乗り、一気に会津若松市内の混雑をワープする。
会津坂下ICを降りたところで、Iida号に異常が見つかる。
なんと、左サイレンサーが抜けかかっていたのだ。
近くのセブンイレブンの駐車場に入って、応急措置を施す。
30分ほど格闘した末、何とかサイレンサーを収めることに成功。
そして「ひまだなー」と呑気に待つ人々。
Iida号に施したのは、車載工具やガムテープなどでの応急措置。いつまた脱落するとは限らない。
不安が残る再スタートとなった。
アドバイスの効果
只見川沿いの国道252号を走る。
県道32号に入り、延々と交通量の少ない田舎の峠道をつないでいく。
最後尾を走るkurokiは、先頭のIidaさんの走りを観察していた。
以前のIidaさんの走りは、率直に言って、バイクまかせに曲がっている状態だった。
緩やかな高速コーナーを流れるように走るのは得意でも、狭い峠道を積極的に曲げていくのが不得意なのは、その走り方が原因だと思う。
ところがIidaさんにも、tatuya講師のアドバイスが有効に作用していたようだ。
バンク開始までブレーキングを引っ張り、フロントに荷重を残すようにした。
これによって、バンキングが鋭く変化したことが、後ろからハッキリ見て取れる。
ホント、楽しそうに走っている。
kurokiも掴めたかも
kurokiもまた、tatuya講師の言わんとすることが、自分なりに理解できてきた。
イン側のステップには力を入れない。むしろ浮かせるようにする。
そうすると、イン側の足がブラブラして落ち着かないので、くるぶしをステッププレートに押しつけて安定させる。
「くるぶしでステッププレートを締め上げる」動作の目的は、コレだろう。
イン側のステップに力が入らず、なおかつ身体の半分がイン側に落ちていると、バイクは自然とイン側に倒れ込む。
その状態で、リアタイヤのイン側半分に荷重をかけてやれば、バイクは自然とイン側へ旋回するワケだ。
「尻半分をシートの上に残す」ようにすると、上手く荷重がかかる。
スキーで例えるなら、イン側のエッジに乗る動作と似ている。
倒れ込む動作を妨げないようにするには、イン側のヒザを曲げたい方向に開き、身体をぐっとイン側に向ける。
身体の向きは、コーナーの出口と平行になった状態になる。
バイクを上手く誘導してやると、ビックリするぐらい素早く向きが変わる。
tatuya講師のアドバイスが、セルフステアを有効に使うための方法論だったことに気が付いたとき、バラバラだった情報が一本の線で結ばれた。
まさに、目から鱗が落ちる瞬間だった。
檜枝岐
伊南川沿いの国道289号に入った。
川沿いを延々と走って、
檜枝岐は、尾瀬から降りてきたと思われる登山客で、ごった返していた。
Iidaさんオススメの蕎麦屋「開山」に到着。
早速、裁ちそばの大盛りを食す。
以前、kurokiが檜枝岐を訪れたときも、裁ちそばを食べたっけ。
素朴な味わいの蕎麦は、変わらず旨かった。
ただ、厳しいことを言えば、この店の接客態度は良いとは言えない。
店員が無愛想でぶっきらぼう。ハッキリ言って、失格の接客だ。
味の方も、旨いけれども極上のレベルには達していない。
小諸のそば七と比べると、見劣りは否めない。
そして一番の問題は、店全体に向上心が感じられないことだ。
尾瀬から排出される大量の登山客によって、慢心を招いたか?
反復練習
檜枝岐温泉で蕎麦を食べた後は、
途中から、伊南川沿いの退屈な道を右折し(この標識が目印)、林道を舗装した峠道に入る。
この道が、もう抜群に良いのだ!
交通量が非常に少ないので、前走車に追いつくこともない。
路面状態も非常に良くて、快適だ。
ハイスピードで逃げるゆういちさんを追走しながら、先ほど掴みかけた「バイクと共に倒れ込む感覚」を確実なモノにしていく。
特に、下りの曲率のキツいコーナーは、感覚を掴みやすい。
そして、ハイスピードで走ったことで別の課題も見つかった。
- 身体をイン側にずらすときに、ハンドルに力を入れてしまいがち。
- 曲率の緩いコーナーや、細かいコーナーが連続する場面は進歩なし。あの感覚で曲がれていない。
- ヒザはもっと自然に開かないと、身体的な負担がかかりすぎる。
更なる反復練習が必要だ。
木賊温泉
木賊温泉は、渓流沿いの野趣溢れる混浴温泉だ。
この坂道を下りていくと、掘っ建て小屋の無料温泉がある。
ちょっと熱めの温泉に、ざぶんと身体を沈める。
「う~~~」とオッサン臭く唸りながら、湯船の中でだらんと身体を伸ばす。
汗でベトついた身体を温泉で洗い流す。日焼けした肌がピリピリと刺激される。
ああ、気持ちいい。
火照った身体を乾かしながら渓流を眺めていると、裸身のみつおきさんが、果敢にも渓流水風呂に挑戦しているではないか。
これは負けてはいられないと、ゆういちさんやkurokiも挑戦する。
うっひゃ~~~~、気持ちいい~~~~~!
急速冷却された身体から、汗がみるみるうちに引いていく。
流れる水風呂に味を占めた我々は、温泉に入って身体を暖めてから、再び挑戦するのだった。
いい歳した大人達が馬鹿騒ぎする様をみて、河原で遊んでいる子供達は何を思っただろう。
少なくとも、親の視線は刺すように冷たかった(苦笑)。
それぞれの帰路へ
思いの外楽しかった木賊温泉を後にして、kuroki達は帰路に就く。
国道352号に入ったところで、ariさんは左へと折れ、新潟へ帰る。
右折したkuroki達は、国道352号、国道121号、国道400号をたらたらと走る。
道の駅たじまで休憩後、塩原温泉郷を抜け、矢板ICから東北道に入る。
仙台へ帰るtatuyaさんとは、ここでお別れだ。
東北道では、車と共に淡々と流れる。
佐野SAで休憩していると、なぜか珍走団の群れに遭遇する。
珍走パレードに巻き込まれたら面倒だ。少し長めに休憩を取ってから、東京へと向かう。
大した渋滞もなく、無事に浦和料金所へ到着した。
みつおきさん、ゆういちさん、Iidaさんと挨拶をして別れ、kurokiは外環道を三郷方面へ向かう。
午後9時頃、松戸の自宅に到着した。
ちゃっちゃと片づけてから、イベント掲示板に帰着報告を行った。
他の皆さんのレスの報告も入っている。皆さん無事に到着しているようだ。
まとめ
今回の裏磐梯オフも、非常に楽しいツーリングだった。
参加された皆さんから評判も良く、幹事としては「成功だったな」と素直に喜びたい。
Iida副幹事のサポートにも感謝!
個人的にも、大変楽しく、かつ収穫の多いツーリングだった。
tatuya講師のアドバイスのお陰で、「壁」を超えるキッカケが見えた。
感謝感謝!なのである。
てなワケで、参加者の皆さん。また走りに行きましょう。
残念ながら今回参加できなかった皆さんも、次の機会にご一緒に走りましょう!
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