TRX850に搭載されているエンジンは、直列2気筒270度クランクです。
進行方向に対して並列(パラレル)に搭載されるため、パラツインと称されます。
270度クランク
TRX850のアイデンティティとも言える、270度クランク。
このエンジンのトルク特性は、基本的に90度V型エンジンと同じで、クランクまわりに生じる不要な慣性トルクを打ち消し、燃焼トルクのみを抽出しやすくします。つまり、アクセルの開度とトルクの出方が一致する気持ちよさを持っています。
トルクの質に着眼点を置いた設計思想は、MotoGPを走るYZR-M1に受け継がれていきます。
そして、2013年。YAMAHAがクロスプレーン・コンセプトを発表。この設計思想をブランドとして打ち出しました。
- TRX850 & MT-07の2気筒エンジンは、270度・450度の不等間隔爆発
- MT-09の3気筒エンジンは、240度・240度・240度の等間隔爆発
- YZF-R1 & MT-10の4気筒エンジンは、270度・180度・90度・180度の不等間隔爆発
乗った人のほとんどが、「コーナリングが面白い!」と口をそろえて楽しさを表現します。
アクセルの開度に直結しているようなトルクフィーリングと、全身を震わす程よいビートが、今も多くのライダーを惹きつけるのです。
Vツインとの比較
Vツインエンジンと比較されることが多いパラツインエンジン。
そこで、Vツインエンジンとの違いという観点でまとめてみました。
パラツインのメリット
- 車体設計の自由度が高い
- エンジンが小さく軽くできる
- エキパイの取り回しが自然にできる
- エンジンの前後長を短縮できる
- エンジンの上部後方にスペースの余裕できる
- 各シリンダーを冷却しやすい
- エンジンを前傾に搭載すると、前輪に荷重がかけられる
- TRX850は40度の前傾レイアウト
- 整備がしやすい
- 販売価格を安価に抑えられる
- 製造コストが安く済む
パラツインのデメリット
- 振動が多くなりがち
- 振動の打ち消しには、バランサーシャフトが不可欠
- 90度V型エンジンなら、理論上一次振動が消える
- 直進安定性が高い反面、曲げにくくなる
- クランクシャフトが長く重くなることで、ジャイロ効果が増す
- エンジンの幅が増える
エンジン単体として見た場合、Vツインの方が有利な点が多いです。
しかし、パッケージングとしてトータルで見た場合は、パラツインの有利な点が増えてきます。
もともとYAMAHAは、ジェネシス思想を提唱したメーカーです。
エンジンを単体で捉えずに、パッケージングのトータルで考える思想なので、パラツインエンジンが搭載されたのも自然な流れでしょう。
また、Cycle Worldの「ケヴィンに聞け」のコーナーでも、違いが解説されています。