[つぶやき] とある日の脱走

まだkurokiが、YAMAHA XJR1200に乗っていた頃のオハナシ。


仕事に追われ、連日連夜、終電間際まで帰れない。
休日だって、ほとんど取ることができやしない。

さて今日も、悲しい休日出勤だ。
顔を洗いながら外の空気を覗くと、2月だというのにポカポカ陽気。まるで一足早い春がやってきたかのようだ。

どうせ今日は休日出勤だ。久々にバイクで会社に行ってみるか。
1時間程度だけど、ちょっとはツーリング気分を味わえるかも。

およそ1ヶ月ぶりに、愛機XJR1200を引っぱり出す。
エンジンに火を入れると、低く重いエギゾーストが周囲の空気を木霊する。
そろりとクラッチを繋ぐと、XJR1200は重低音を引き連れて、メインストリートへと進んでいく。

久しぶりに味わうエンジンの鼓動やシフトの感触、春先の様な心地よい風が相まって、kurokiは自然に鼻歌を口ずさむ。
思わず顔がほころぶ。

「ええいっ、今日は仕事はヤメたっ!」


国道6号線に出た途端、kurokiは会社と反対方向に進路を取る。
右手をぐいとひねり、アクセルをワイドオープン。
XJR1200は非現実的な速度域に突入し、仕事に追われる日常を、忘却の彼方に追いやる。

体中で味わう、この爽快感。
つまらない日常で萎んでしまった何かが、よみがえってくる。

とりあえず、筑波山へハンドルを切る。
土曜日だというのに、意外なほど交通量が少ない。
ツーリング気分を満喫しながら、1時間ほど走ると、筑波山に到着。

さ~て、と。
身体をほぐしながら、慎重にワインディングに突入する。

目前にコーナーが迫る‥‥フルブレーキング!
乾燥重量230kgの重量級マシンは、急激に速度を落として、ライダーを前に投げ出そうとする。
両膝でそれに抗いながら、ターンポイントで一気にブレーキを解放する。

ぐらっ。

荷重の抜けた車体を、即座にインに倒しこむ。
マシンは深々とバンクし、ステップがカリカリと音を立てる。
軽い恐怖心を抱きながら、コーナー出口を睨み付ける。

出口が見えたっ!

アクセルを捻ると、XJR1200は弾けるようにコーナーを脱出する。

うん、コレだよ、コレ。
頭の中が真っ白になる。

小1時間ほど峠を走り込み、展望のきく場所で一休止。
静寂の中に、火を落としたエンジンが、キン、キン、と音を立てる。
kurokiは満足げに缶コーヒーを飲み干した。

さて、明日も仕事だ。
キツいけども‥‥、何だかやれそうな気がしてきた。